ビジネスモデル特許について
ビジネスモデル特許についてお聞きしたいです。
現在ウェブサービスを構築中なのですが、競合するサービスがビジネスモデル特許の申請中という記載を
発見いたしました。
そこで、お聞きしたいのですが、
1ビジネスモデル特許は、何を保護するのか。プログラムなど技術的な要素なのか、課金方法や集客方法などの仕組みなのか。
2効力の発揮時期。仮に特許申請が承諾されたとして、申請中に私達が似たようなモデルでサービスを始めた場合、後後特許侵害として訴えられるのか。時系列としては(某社のサービス開始)→(某社が特許申請)→(私達がサービス開始)→(某社の特許承諾)という流れになると予想されるのですが、如何でしょうか。
3某社はサービスを公開した後に特許申請という流れをとっておりますが、その流れで特許申請したとして、知的財産は保護されるのか
以上3点、ご回答いただけると幸いでございます。
ID:2797 投稿日:2014/07/29 21:15:50 投稿:baseba
回答数 1件
通りすがり さん
はじめに
特許分野は専門性が高く、判断が困難で、出願戦略等を誤ると多大の損害を被る恐れがあるため、実際の技術とともに、弁理士・知財を専門とした弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
1 ビジネス方法特許
ビジネス方法特許(≒ビジネスモデル特許)とは、新規なビジネスの手法を、コンピュータシステムやネットワーク等の技術的手段を使用して具現した発明を特許の対象としたもの(汎用コンピュータや既存のネットワーク等を利用した新しいビジネス方法に関連する発明)をいいます。
ここでのビジネスモデルとは、ビジネスの仕組みや方法のことをいい、一般的な事業戦略と収益構造とは別個のものですのでご注意ください。
ビジネス方法特許の例としては、
Amazonのワンクリック特許
(特許4937434)ギフト発送方法及びそのシステム・(特許4959817号)アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法及び アイテムの注文を受け付けるサーバ・システムにおける方法
や
凸版印刷のネットワークに接続可能にされているサーバコンピュータに設けたサイトに広告情報を登録し、当該サイトにアクセスしたクライアントが広告情報を見ることができるようにしたもので、地図上の商店の広告の情報を供給可能等にした方法
(特許2756483号)
三井住友銀行のパーフェクト特許(特許3029421 号)
等があります。
ビジネス方法特許の保護対象ですが、ビジネス方法特許の内容が、コンピュータや既存のネットワーク技術を利用した新しいビジネス方法が『発明』ですので、かかるビジネス方法の実施が保護対象となります。
保護対象はコンピュータ技術等を利用した新しいビジネス方法なので、プログラムそれ自体ではなく(プログラムは、ソフトウェア関連発明や著作権法として別途保護されるか検討されます)、課金方法や集客方法に近いもの(従来にはない新しいビジネス方法で、コンピュータ等を利用したもの)と考えたほうがよいかと思われます。
ただ、コンピュータを利用したすべてのビジネス方法が特許の対象となるものではなく、①特許法上の発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)、②新規性、③進歩性等の高いレベルの要件を充足しなければなりません。
2 特許権の効力の発生時期
特許出願手続はおおざっぱにいえば(出願 → 出願公開 → 設定登録)という流れを経ます。
特許権の効力は、設定の登録により発生(特許法66条1項)します。しかし、それ以前の出願公開後には、特許出願人に対して、その発明を業として実施している者に対して、警告をしたのちの補償金を請求する権利(65条1項)が認められています。
したがって、出願公開後には、警告ののち一定の請求がなされる可能性があります。出願公開前の段階では、特許権の効力は生じておらず、補償金請求権も認められていないので、原則として自由利用が可能です。
なお、特許出願前から当該特許と同じ内容の発明を実施していた場合には先使用権(79条)を主張できる場合がありますが、79条では①特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明を行い、②特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をし、又はその事業の準備をしていること、が要件とされていますので、某社のサービスを既に知っており、(某社のサービス開始)→(某社が特許申請)→(私達がサービス開始)→(某社の特許承諾)という流れの場合には、先使用権を主張することは困難かと考えられます。
3 サービスを公開した後に特許申請という流れ
サービスを公開してビジネスをしていたことが、新規性喪失事由(29条1項各号)にあたるかが問題となります。
新規性喪失事由とは、①特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(公知)であるか、②特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明か、③特許出願前に刊行物記載等がなされたかで判断されます。
公然に知られた発明とは、技術的に理解される発明の内容が秘密状態を脱した場合をいいますが、本件でのサービスの提供していることが直ちに技術的に理解される発明の内容が秘密状態を脱したと評価できるかはよくわかりませんので、専門家等にご相談ください。
なお、新規性喪失事由がある場合には、特許出願は拒絶の査定(49条2号)がなされ、仮に登録されたとしても特許無効審判(123条1項2号)の対象となります。
ただ、新規性喪失事由の例外(30条)があり、一定の要件のもと、6か月以内であれば、新規性喪失事由に当たらなかったとされる場合があるので、判断には注意が必要です。
ID:A20140730061436 投稿日:2014/07/30 06:14:36