中村憲昭法律事務所
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中村憲昭法律事務所のコラム
投稿:中村憲昭
紛争をこじらせる弁護士、早期解決する弁護士
以下は、特定の事件を指しての評価ではなく、一般論として述べます。もしかしたら批判的に聞こえるかもしれませんが、ある意味自分にとっての戒め的な意味もありますので、失礼な表現についてはお許し下さい。
弁護士によって、紛争をこじらせる弁護士と、早期に紛争を解決してくれる弁護士がいます。
登録当初からの私のポリシー(というほど大げさでもありませんが)なのですが、「弁護士は、本人の利益を一番に考えながらも、本人ではなく代理人であることに意義がある」と考えています。
弁護士も人間です。普通の人と変わらないか、むしろ性格が頑固なだけに、多くの人よりも物分かりの悪い人が多いかもしれません。
当然、夫婦げんかもします。その場合、冷静に話し合いが出来るかというと、そんなことは全然ありません(笑)。むしろ、どうでもいいことにこだわって、へそを曲げたりします。
何が言いたいかというと、「紛争を当事者で解決するのは困難だ」ということです。
お互いが冷静であれば、そもそも紛争になることは少ないはずです。どちらかが、あるいは双方が理不尽だったり、非合理的な考えだったり、感情的であるからこそ、紛争になるわけです。
そんな状況で、当事者で冷静に…、などということは、相当困難でしょう。多くの家庭でどう対応するかというと、一晩冷静になって考えて、翌日仲直りする、などということが良く行われていると思います。一旦リセットして、冷静になってから和解交渉に入るという、高等なテクニックです(笑)。
調停や訴訟に持ち込まれるケースは(中には確信犯的に義務を履行しない当事者もいますが)、ほとんどの場合、双方にそれなりに言い分があります。
法廷にまで持ち込まれるまで解決しないということは、それだけ当事者による紛争解決が困難であるということです。
最近「依頼者の立場で全力で戦います」と標榜する弁護士が多くなったように感じます。
当然、依頼者の立場を考えない弁護士はいないと思うので、当たり前のことを言っているだけであればいいのですが、これが文字どおり、依頼者の拡声器よろしく、依頼者と声を揃えて同じ主張を繰り返すという意味であれば、嘆かわしいことです。
「依頼者の立場」という言葉も、考えてみれば微妙なものです。
感情に任せて意見をぶつければ、その時は良いかもしれませんが、事件は紛糾し、長期化します。それが依頼者の利益になるのか、という問題です。
(これは過去に経験した事件ですが)、ある事件で、相手方代理人は「当事者の感情に配慮」して、相場を大幅に上回る慰謝料を請求してきました。
その結果、当方の当事者も態度を硬化させました。まして、その事案は事実関係に争いのある事案だったため、その事実関係をはっきりさせようということになり(詳しくは書きませんが、事実関係に踏み込まずに和解すべき事案でした)、2年以上も争いました。
相手方代理人にとっては「依頼者のためには(相場から外れた高額の慰謝料であっても)、一度は金額をぶつけることが必要なのだ」という考えだったかもしれません。しかし、その後2年以上も解決まで時間を要しました。
「損して得を取れ」ということわざにもあるように、その場では損をしたように見えても、大局的には得をする(あるいは「損失がそれ以上膨らまない)こともあります。そのようなことに気づくきっかけを与えるのも、弁護士の仕事です。
その説得が出来るかどうかが弁護士の能力の一つかもしれないと思うのですが、なかなかうまくいきません(笑)。
確かに、私も杓子定規に「前例からすると勝てない」と切って捨てるつもりはありません。事案によっては、負け筋であっても対応しなければならない事案もあります(つい最近のブログ記事「勝てる弁護士」でもそのことは述べました)。
しかし、その場合であっても、自己の主張が事案解決にどのような影響を与えるのかは熟慮したうえで対応したいと、常に考えているつもりです(もしかしたら、相手方からは「こんなおかしな主張しやがって」と思われているかもしれませんが)。
その意味で、私は弁護士として、単なる依頼者の拡声器になるつもりはありません。ただ、そのことは、大きな視点で見れば、依頼者のためになっていると信じています。
2014/02/21
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