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弁護士法人 高橋智法律事務所

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土・日・祝日
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弁護士法人 高橋智法律事務所のコラム

投稿:高橋智

有責配偶者からの離婚請求と女性の地位

 急な坂を重たい荷物をのせてリヤカーが登っていきます。リヤカーを先頭で引っ張っている人に「後で押しているのは貴方の息子さんですか。」と質問すると「はい。」という答えが返ってきました。そこで、後に回って、リヤカーを押している人に、「前で引っ張っているのは貴方のお父さんですか。」と質問すると「いいえ。違います。」という答えが返ってきました。こういうことはあり得るでしょうか。
・・・・という「頭の体操」がありました。

 答えは、リヤカーを引っ張っている人は、母親だったというのが正解なのですが、一瞬、答えが出てこない方が多いのではないでしょうか。それは、力仕事をしているのは父親に違いないという固定概念があるからです。力仕事は男性で、女性は家庭を守っているというのが日本の典型的なパターンです。

 日本では、女性は専業主婦になると、キャリアを失い、50才近くなってから離婚して仕事に復帰しようとしても、なかなか仕事は見つかりません。そうすると、夫からの婚姻費用だけが頼りという状態になってしまいます。ですから、婚姻は破綻していても、婚姻費用を支給させるために、離婚を認めないという構図が生まれます。結婚は永久就職とよく言われますが、日本では妻の地位が絶対です。自分に落ち度がない限り、離婚されることはほとんど無いということになるでしょう。しかし、夫婦の間に愛情が何もない、憎しみだけ、修復しようがないのに夫婦でいなければならないというのは、非常におかしいと思います。

 有責配偶者からの離婚が認められないのが主に経済的理由なのであれば、有責配偶者側の大きな経済的負担を課せば良いと言うことになるのではないでしょうか。有責配偶者側が経済的負担を確実に履行するという担保があれば、離婚は認めて良いのではないかと思っています。

 有責配偶者からの離婚請求に対して断固これを拒絶する女性がいますが、トータル的に見て本当に特なのかどうかは疑問です。有責配偶者からの離婚請求はいつまでも認められないということはありません。信義則に反しない事態になれば、離婚請求は認められることになります。法的な離婚が認められる状態になれば、男性側は多額の和解金を支払う必要はなくなるからです。

 一方、結婚する前の婚約不履行の問題では、婚約破棄の慰謝料は非常に抑制的な認定がなされています。日本という国が結婚という制度を極めて重視しているということは実務をみるとよく分かります。だとすると、女性は結婚するということが、日本では、一番自分の身を守ることということになるし、男性は結婚するときには相当の覚悟をしなければならないということになります。結婚しているのとしていないのとでは日本では雲泥の差があるのです。でも、本当にこんなに差があって良いのでしょうか。

 女性の社会進出が進み、男性と同等の死後や収入を得るような男女雇用機会均等の社会、真の男女平等参画社会が誕生したら、有責配偶者の問題はなくなると思います。有責配偶者のケースで、非有責配偶者を極めて手厚く保護するというのは、それだけ女性の社会的地位がまだまだ向上していないという証であるように思います。

2012/03/18

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